☆の備忘録

完全耳コピ

薔薇と白鳥 マーロウセリフ③

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おかわりを頼む。
さっさと持ってこい。
なんだって?

おい、静かにしろ。仕事の邪魔だ。
だったら黙って飲め。
ピーチクパーチクうるさいぞ。お前らはスズメか?九官鳥か?それともアホウドリか?
わかったような口利きやがってこの脳足りんどもが。

俺を助けにきたのか、嬲り殺しにきたのかどっちなんだ。
ふっ、お前に助けられるとは俺も随分落ちぶれたもんだ。
悪いが、お前の仕事はもうやらない。
俺の人生だ、好きにさせてもらう。
待てフライザー、何か動きがあるのか?
教えろ。

おかげでウィルへの関心の目も緩んだ、あいつは命拾いしたってわけだ。
どういうことだ?
フライザー、なぜそれを俺に教えた?
俺がウィルに話すかもしれないのに?
お前には二度と会わない。

だれだと思った?
足、触ってみるか?
これを見てくれ。

新作の台本だ。セリフとプロットも半分は書いた。

見ないのか?


タイトル見りゃわかる。
あぁ、イングランド史上最低最悪の王の話だ。
いや、まんまやる。捻りとか小細工はなしだ。
買ってくれんのか?
どう思う?
パリの虐殺の時、お前は入るといったがそうはならなかった。今度はその逆になる。
検閲が通ると太鼓判を押したのは誰だ?


ヘンズロウ!このエドワード2世は検閲が入らないよう十分配慮して書く。それならどうだ?
うまくほのめかす。ばかな役人どもには気づかれないようにな。
正直に言おう。あれは俺が書いたんじゃない、書かされたんだ。だからダメだった。今度は違う。これは、今の俺が本当に書きたいものなんだ。
それは一部だ、全てじゃない。いいか…

客に合わせてばかりいてはだめだ、こっちから巻き込まないと!

 

ヘンズロウ?
聞いてくれ、これはいままでの歴史劇とは違うんだ、
共同経営者?誰だ?
またそうやって逃げんのか?
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まぁ、色々と。おいネッド。
これを読んでおいてくれ。
書きかけの新しい芝居だ。ヘンズロウが共同経営者?の同意が必要だって言うから。
読み終わったら返事をくれ。

悪いが、俺は遠慮しておく。
亭主が呼んでるぞ。
ウィル、お前も行っていいぞ。

少しなら。
なんだ、話って。
そんな話はそのまま積もらせておけ。
俺は元からこうだ。
お互い様だ。
こうやって蚊帳の外に出てみるとよく分かる。いかにお前の笑顔が偽物だってことがな。
正直なだけだ、思った通りが口をついて出る。
何が言いたい?
言えないことなんてない、言わないだけだ。
お前に何が分かる。
自分にしか分からないこともある。

(じゃぁ教えてください。なんでエドワード2世なんですか?)
直感だ。
(ヘンリー6世を書くって言った時、マーロウさんはそんなだめな王を主人公にするなと言いました。だからまわりに複数の主人公を作ったんです。)
知ってる。
(エドワード2世は誰が主役なんですか?)
エドワード2世だ。
(ヘンリー6世を超えるダメな王ですよ。)
その最低最悪ぶりを書く。
(最後は暗殺されるんですよ?それも最低最悪な方法で。真っ赤に熱した鉄の棒を尻の穴に突っ込まれて死ぬんです。)
見せ場にしてみせる。
(…客が入りますかね。)
ヘンズロウと同じことを言うな。

同類という言葉はそういう風に使うもんじゃない。
ウィル、なんでネッドに会いに来た?
そうかな?お前ネッドに劇場の経営を教えてもらいにきたんじゃないのか?
質問を変えよう。
どうして最近芝居を書いていない?
ちゃんと答えろ。


それが芝居を書かなくなった理由だっていうのか?
嘘だ。
心の底から?
そう信じているなら、お前は自分に嘘をついている。教えてやろう。
盗むものがなくなったんだ。
最初に俺は盗めと言った、そしてお前は俺から盗んだ、どんどん盗んだ。
はじめは俺すら気付かない方法で。だがそのやり口は徐々に露骨になっていった。その最たるものがリチャード3世だ。大して利口でもない客すら気付いたくらいだ。
話はここからだ。
俺が新作を書かないこともあって、お前は盗むものがなくなった。途端にどう書いていいか分からなくなった。何を書けばいいか見失った。違うか?
ウィル、勝負はここからなんだ。
他から盗むものがなくなったら、頼りは自分しかいない、自分に何があるかが勝負だ。自分の中から湧き出て、他の誰にも由来しないもの。それが本当の言葉だ、本当のセリフだ本当の芝居だ。だが、そこにたどり着くまでに待っているもの。それは…恐怖だ。納得できるものが書けるか分からない。何日も何週間も何ヶ月もかけない日が続く。その恐怖に打ち勝ったものだけが、芝居を書く資格があるんだ。

その通りだ。お前もたまにははっきりものを言う。それともう1つ。お前…何か手に負えないことに直面してないか?
それだけならいい。

特に決まった場所はない。
特に決めてない。じゃぁな。
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「卑劣な運命の女神よ。今わかった。お前が紡ぐ車には、人間が登ろうとした途端、真っ逆さまに落ちていく頂点があるのだな。そこに俺は触れたのだ。そしてもう登れないと分かったからには、どうして落ちていくことを嘆く必要がある。さらば美しきお妃。モーティマーのために泣いてくださいますな。この世を嘲笑い、旅人となって、まだ見ぬ国々を見つけにいくだけですから…」

ジョーン?
なんのために?
帰ってきたわけじゃない、立ち寄ってみただけだ。

何しにきた?
用件だけでいい。
なぜネッドが直接伝えに来ない?
聞こう、ネッドの答えを。
理由は?
ギャビンストンはネッドに宛てて書いたつもりだが。
途中で死ぬのはトールボットも同じだろ。
その省略が逆に効果を生むんだよ。
じゃあモーティマーは?いま、モーティマーのラストのセリフを書いたところだ。この役は前半ではあまり活躍しないが後半では…
じゃぁ最後まで読んでもらってくれないか?そうすれば気にいるはず…

ネッドがそう言ったのか?
なぁ、ジョーン。今まで聞いたどの理由もネッドが直接言ったわけじゃないんだろ?
奴は理由も言わずただ一言、NOと言っただけだ。違うか?
だからジョーンが来たんだ、理由を付け加えて、俺を納得させるために!そうなんだろ?
怒ってはいない…ただ、やるせないだけだ。

用件は済んだろ。帰ってくれないか。
もうジョーンの部屋じゃない。抜け殻だ。ハリボテさ。観客のいない舞台のようなもんさ。もはや生きて呼吸する者は誰もいない。セリフを与えられた役者が2人つったっているだけ。そのセリフも言い終わった。あとは幕を引くだけだ。

誰だ?
お前ら、なんでここに?
妙なところ?
まさか!?!

手短に話せ。いらない尾ひれは付けずにだ。
あぁもう、好きなように話せ。

なんの相談だ?
尾ひれはいらない!

ちょっと待て、それに火をつけようってのか?
暗殺?誰を?
バーリー卿?どこかで聞いたな。
待て待て待て、客席はバーリー卿だけじゃないだろ。観客まで巻き込んでどうする。ローズ座は2,000人入るんだ。2,000人を巻き添えにするっていうのか?
第一、バーリー卿1人殺せばいいだろ。なんで爆発なんてする必要がある?
で、その計画にウィルも加わっているのか?
あいつも実行犯の1人ってわけか。
何を囁かれた?

やめろ。それはダメだ。下手に動くとウィルが捕まる。死刑は免れない。
あぁ、でも奴はそう簡単につかまったり、説得されるとも思えないがな。
俺に任せてくれ。1つだけ方法がある。
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これが最後だ。

仕事じゃない、これは取引だ。
お前にとっても損はないはずだ。

ある暗殺計画が進行している。詳細まで掴んでいる。一味を一網打尽にできるチャンスもある。
(条件は?)
一味のうち、1人だけ見逃してほしい。
どうだ、乗るか?
(ダメだな)
どうして!?だった1人だけ見逃すだけでいい、お前の裁量でなんとかなるだろ?

知ってたのか…。

なぁ頼むよ、ウィルだけでいいんだ。密会場所もアジトも分かってる。犯行前に踏み込んでくれ。

 

じゃあ知ってて、わざと。
事前に食い止めるのがお前らの仕事じゃないのか?フライザー!お前人の命をなんだと思ってる。
観客は2000人だぞ、2000人!


戦争と一緒にするな。
そういうことを言ってるんじゃ…

わかった。もうお前には頼まない。

 

俺を殺すってことか?

 

くそっ!なんなんだよ!